2016年度の新卒採用で「面接による選考の廃止」を発表したビースタイル。
その決断に至った理由とは?面接の代わりにどのような選考をするのか?
ビースタイルの新卒採用企画・運営を担当する兒玉さんに詳しくお話をうかがいました。
表面的な面接・採用活動にNO。知りたいのはあなたの人となり。
ーーーーー今年(2016年度)の新卒採用で面接を廃止するとのこと。とてもユニークですね。
今回の取組みは決して奇をてらったものではなく、これまでビースタイルがやってきたことを
突き詰めた結果、「面接を廃止する」という形にたどりついたという経緯があります。
かくゆう私も学生の時に弊社の面接を受けまして、そのときも王道ともいえる「志望動機は?」「あなたの強みは?」
といったベタな質問をされた覚えがなく、そのかわり“人となり”に迫る質問が多かったのを覚えています。
(株式会社ビースタイル 人事総務ユニット 兒玉有希)
ーーーーーたとえばどのような質問ですか?
「これまでどう生きてきたか」あるいは「どんな考えを持っているのか」といった感じです。
その人の内面にグンとフォーカスしていくので、学生さんにもよく「面接っぽくない」なんて言われますね(笑)。
ですから今年は「面接」という手段はとらず、フラットな気持ちで挑んでもらいたいと思っています。
それと、今年は大手就活サイトを利用せず、SNSの活用や学生さんの間での口コミを期待しています。
選考にエントリーできるのは原則として当社のHPからのみです。
数千人規模の大量エントリーは双方に非効率。求める人材を見落とす可能性も。
ーーーーーそれはなにか狙いがあってのことなのですか?
弊社のようなベンチャー企業でも大手就活サイトを利用すれば数千人の方がエントリーしてくださいます。
でも実際に内定を出すのは毎年5〜10人程度ですので、1次のグループ面接でその半数をおとさざるをえない。
適正を見た上でやむなく……という方もいらっしゃるのですが、一方で「なぜうちに応募したんだろう?」と
不思議に思う方も多々いらっしゃり、以前から疑問に思っていました。
ーーーーー「とりあえずエントリーした」みたいな?
そういう雰囲気って見たらすぐわかるし、こちらも”それを見越して”一次はグループ面接でたくさんの
「お祈りメール(※連載第二回参照)」をする方法をとっているところがあって。
これはお互いにとってプラスにはならないということになりまして。
ーーーーー人数があまりに多いと、優秀な人材を見落としてしまいそうですしね。
そうなんです。せっかくのご縁ですので出会いは大切にしたいし、一人一人についてしっかりと理解したい。
ですから学生さん側も入りたい企業を見極めた上でしっかり準備して選考に来てもらった方がいいでしょうし
迎える側もそのつもりで臨めるのがベストなのではないかと考えています。
ーーーーーなるほど。
また、学生さんも面接官も「面接」という形をとると、どうしても構えてしまったり
その非日常的な場の空気にのまれてしまい、打ち解けて本質的な話に入るまでに15分~30分時間を
とられることも少なくありません。
本来面接とは「お互いを理解するため」に設けられた場のはずなのに
逆にコミュニケーションが取りづらくなってしまうんです。
ですので、本来の目的から考えて面接という形にこだわらなくてもよいと判断しました。
ーーーーーとはいえ、大多数の企業は面接という形をとっていますよね。
必ずしも面接が有効ではないわけではありません。面接に向けていかに対策を練ってくるかを
見ている企業もありますし、その選考基準で自社にあった人材に出会える企業もあるのだと思います。
ただ弊社はそこを重視していなくて
あくまで「今までの世の中にはない新しいサービス・事業を産み出し、広めてくれる人」を探したい。
定型的な質問に対しての模範解答を準備し、周りに合わせるのが上手い人を採用したいのではなく
その人の強みや本質的な欲求をみて採用したいと思っています。
ですから、建前や上辺だけではなく「素の姿でぶつかっていける選考方法」にこだわりたいんです。
学生と社員が同じテーブルで競い合う?!互いにぶつかって相性を見極める。
ーーーーー一面接の代わりにどのような選考をおこなうのですか?
5つの人材属性ごとにテーブルゲームやディスカッション、プレゼンテーション等
いわゆる就職対策だけでは通用しない内容での選考を予定しています。
それぞれにチェックポイントがあり、たとえばテーブルゲームでは勝つことへの
こだわりが強いかどうかを推し量ったり、社員を従えてリーダーシップを発揮するワーク等も準備しています。
ディスカッションではいかに説得力のある論理の組み立てができているかを見たりと、様々な角度から選考します。
ーーーーー一個性やセンスが際立つ興味深いプランですね!ゲームは「素」が出るので丸裸にされそう(笑)
学生も社員も”双方に”丸裸になるシチュエーションをつくることがポイントです。
全ての選考には社員もプレイヤーの一人として参加する予定です。
お互いの本質が見えるという醍醐味がありますので
学生さんも弊社の社風や働く人のイメージがつきやすくなるはずです。
腹を割って対話することで、「こういう仲間と働いてみたい」と思っていただけたら我々も光栄です。
ーーーーー一選考する側もされる側も、お互いに面接では見えないその人の特性が透けてみえてくるという。
学生さんには事前に5つのタイプから1つを選択し、エントリーしてもらいます。
たとえば「勉強キライじゃないよ学生」とか、「キャプテンだった学生」とか、
「空想でごはん食べられちゃう学生」とか、自分はこれに近いかなと思うタイプを選んでおいてもらうのです。
「勉強キライじゃないよ学生」は、例えば高校生クイズに出るとか、大学で研究を続けてきたような学習が得意な方。
そこにカテゴライズされた方は、これまで蓄積してきた知識をどう応用できるかというディスカッションをします。
弊社からもそのタイプ(知識人)の代表格を選抜して参加しますので、かなり白熱すると思いますよ。
そこであたらしい個性や才能を見いだせたらいいですね。
ーーーーー一最終選考までどのような道のりがあるのですか?
今年は「辞退するまで最終選考に進む」というルールでいきます。
その代わり最終面接まで道のりが長く1~2回選考に参加して終わりという話ではなく
最低でも5回は様々な方法でコミュニケーションを取って行きたいと考えています。
お互い納得がいくまでじっくり時間をかけたいと思っています。
今までもたれていた採用方法の先入観を取り除く。
ーーーーー一既存の新卒採用の枠を破る取り組みはなぜ生まれたのですか?
先ほどお話した大手就活サイトを利用することによって
大量エントリー・大量不採用がうまれてしまうような仕組みや
選考する側もされる側も本音で話をすることができない面接という場など
今までの新卒採用の在り方に会社として問題意識を持っていました。
また、景気回復の影響もあり新卒採用でも売り手市場になっています。
閉塞感を感じる状況でこれまでとは異なる次なる一手を打つ必要性を感じていました。
ーーーーー一その前提のもとで……?
はい、さらに言うと弊社のコーポレートスローガンは『新しいスタンダードをつくる』です。
しかし、これまでは他社企業と同じように大手就活サイトを使い、グループ面接をし
3回くらいの面接を経て内定を出すという一般的な選考スタイルをとってきました。
それでは、やはりうちらしくないですし、採用における競争力を高めることができません。
そういう意味で今年は新しいスタンダードになる新卒採用の形を生み出していける手応えを感じています。
採用活動を行う最大の目的は「優秀な人材を採用すること」ですので。
ーーーーー一色んな意味でチャレンジングな試みですね。
この新たな選考方法をとることで
今の新卒採用・就職活動の在り方に一石を投じるような取り組みにしていきたいと考えています。
学生さんには「大量にエントリーすることがよい」という風潮や
ありきたりな「就職対策」をすることは重要ではないということが伝われば嬉しいです。
同じく、新卒採用をしている企業の方々には今の採用についての考え方や
やり方を見直すきっかけを提供できれば良いと考えています。